予防内科™とは
予防内科™ の重要性と新しい医療としての位置づけ
私たちの生活環境は、時代と共に変化し、医療に求められる役割も日々進化しています。
その中で、港北ハートクリニックでは、内科・循環器内科に続き、「予防内科」という新しい診療科目を設けることになりました。この科目は、ただ病気を治療するのではなく、病気を未然に防ぎ、健康を長期的に維持することを目的としています。
予防内科のコンセプトは、既存の医療が対応しきれなかった病気や症状に対して、解決策を持ち、そもそも「病気にならない体を作る」ことを、新しい時代の医療行為ととらえていくことです。
これは、急性または慢性の症状が顕在化する前に、生活習慣の見直しや予防策を講じることにより、高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病を含めた多くの疾患を防ぐことを目指しています。
さらに、予防内科では病気と健康の追求の結果、健康の維持ではなく、元気な人がより元気になることで患者様一人ひとりの生活の質(QOL)を高めることを究極の目標としています。そこには、老化そのものも「病気の一種」として位置付けることで、機能低下への防止策も含んでいます。
このような試みは、これまでにも医療だけでなく、治療の分野でも熱心な医師や治療家の方々により研究されてきてはいました。
しかし、実際には西洋医学を中心とする医療と東洋の医学を中心とする治療の相互には行き来がなく、体系的な知見が公に共有されることがあまりないまま、今にいたっています。
その結果、医療では不定愁訴は原因が不明のままとなり、代替医療の分野では西洋医学の知見にみられるような診断が難しく、それにより、症状の改善が治療家の技術やと患者の相性によって結果が左右されてしまう欠点がありました。
当院は、現代の医療だけでなく、代替医療、そして最新の医療をも現代のクリニックでの診療に統合することで、それぞれの患者様が、人生の健康で充実した日々を送ることができるよう支援します。
予防内科™ の概念
従来の医療との違い
既存の医療との最も明確な違いは、鍼灸や漢方といった代替医療や、嗜好や健康法の一貫のように見られがちなサプリメントや点滴療法などを、医師の診察を経て、エビデンスをもとにした効果と照らし合わせて提供している点です。
提供するものの多くは、不定愁訴をはじめとした、従来の概念では医療行為の対象とすること自体が難しかった症状に対しての診断や解決方法となります。
病症の4段階
そうした不定愁訴に対して処方をするにあたり、予防内科では、大枠で語られることの多かった「症状が顕在化していない状態」つまり未病の状態をより細かく見極めるための判断基準を新たに概念化しています。
なぜなら、本当の意味で健康を追求するなら「病気になる前の状態を察知し、対応する」べきと考えるためです。逆を言えば、現代の医療は、主に症状が顕在化した後の急性症状への対処を担ってなってきた、ということができるでしょう。
そこで、予防内科では「そもそも症状を発生させないための対応策」と、単なる一時的な体調不良なのか? 症状の芽なのか? を区別するための新たな判断基準を設けることにしました。それが、当院が現在予防内科での処方の指針としている「病症の四段階」です。
第3層 と 第4層 について
症状が明確に現れている段階では、従来の医療と同様に対症療法を行います。しかし、当院の予防内科では、更に症状の根本原因を探求し、再発防止や症状の悪化防止の施策を並行させます。
この段階での治療は、薬物療法だけでなく、補完的な治療法(例えば、鍼灸や漢方、自律神経を調整する療法など)を組み合わせることが多いです。
第1層 と 第2層 について
未病は「病気」です
というキーフレーズが叫ばれるようになって、しばらく経ちますが、一般にはあまり浸透していない、というのが現実です。それは、受診者側からは「病気になっていない状態」との区別が極めてつきにくいためだと思われます。
そもそも未病とは、健康と病気の間にある「なんとなく不調」という、原因のハッキリしない状態を指す、医療用語です。通常、未病は、症状の発生を伴いません。よって、これまでは医療の現場では、特に対策はとられることがありませんでした。
しかし「未病」は、本来、具体的な症状はまだ現れていないが、将来的に病気に繋がりうるリスクを抱えている状態を指します。そこで、予防内科では、この段階での介入こそが、本質的な健康を作るものと考えます。
この段階で現れる状態はこれまでは「それぞれの生活のスタイル上、どうしようもないこと」「本人の体質だから仕方がない」とされてきたような微妙なものばかりです。だからこそ、今後の加齢や体力の低下、そこに重なる季節の変化などに備えて、生活スタンスを振り返り、改めたり、場合によっては免疫力を高めたり、不足が予測される成分を補給しておく、などの対応をとっておくのです。
この未病をさらに1層と2層を分けることは、予防内科にておいて、病床の4段階を位置付けた意味そのものでもあります。
なぜなら、これまで「不定愁訴」として解決策が提供出来なかった状況を「2層」として位置付けることで、これまでには出来なかった処方が可能になるからです。
例えば、これまで「生活習慣病予防」に対して、結局のところ投薬以外では「生活習慣や食生活の見直し」しか、提案出来ないのが現実でした。しかし、2層を設けることにより、若干症状が進み、疲れ、睡眠障害、肥満、などの兆候が出た時に、本人の努力に任せるだけでなく、鍼、酸素、サプリや漢方などの選択肢が、医療として提案できるようになるのです。
この部分への理解と言語化に加え、これまで代替医療が行ってきたことの医療への翻訳と再定義は、予防内科が果たすべき役割の一つと考えています。
抗老化とアンチエイジングの違い
アンチエイジングは美容クリニックでよく見られるアプローチで、主に外見の若返りを目指す点滴や美容施術を提供しています。これらの方法は、身体の表面を整えることを主眼として処置を展開することが多く、根本的な老化プロセスには対応していないことが一般的です。
一方で、抗老化医療は、老化を「病気」として捉えることで、「治療可能な症状」として、アプローチを設計します。この考えは、ハーバード大学のデビッド・シンクレア教授の著書『ライフスパン』に基づいており、著書ではNAD+などの分子を補充することで、細胞の若返りが可能であると説明しています。シンクレア教授は、このアプローチでは、特に40代以降に減少する細胞を活性化させる成分を補充させることで、老化による身体機能の低下は、防げるのではないか、と提唱しています。
具体的には、ミトコンドリアの働きを補えば、そもそも病気にならないのではないか、という考え方です。
人は加齢によって、体のあらゆる部位を作る細胞「ミトコンドリア」の機能が低下します。ミトコンドリアは各種エネルギー源を得ることで働き、ATP(アデノシン三リン酸)と言われる生体エネルギーを生み出すことで、各臓器を動かしていきます。ですので、ミトコンドリアにエネルギー源を届け続け、ATP産生の際に発生する不要な活性酸素を除去することができれば、ミトコンドリアの働きが落ちず、各臓器や身体機能が低下しないため、病気にならないのではないか、というものです。この問題に対処するため、ミトコンドリアにエネルギー源を届ける方法、および、効率を高めるための治療法が考案されています。
予防内科でもこの考えを支持していますが、課題もあります。それは、どの細胞、ひいては臓器、機関の細胞のエネルギーが不足しているのか? ということが 現代の医療では特定することが難しい、ということです。そのため、特に不足が予測される成分や、不定愁訴に由来する臓器や部位に関係する成分を、体系的に補うことで、対処することを提案しています。
抗老化医療が、結果として美容や若返りのような観点で語られることはあります。ですが、美容やアンチエイジングは健康を実現しません。この、不可逆な関係性が両者の決定的な違いといえます。
抗老化は、活動的で健康的な長寿を実現するための戦略であり、医療費削減や高齢化社会などの社会課題に対応することで、医療の新たなアイデンティティとなることを目指しています。
「改善ブースト」と既存の「薬物投与」の違い
「改善ブースト」とは、患者の自己治癒力を瞬間的に最大限引き出すため、一時的に薬物やサプリメントなどを用いて栄養素などの不足成分を補給する、という考え方です。
このアプローチは、単に一時的な症状の緩和だけでなく、患者本人の、積極的な症状改善への姿勢そのものを後押しすることに貢献します。
従来の医療アプローチとしての「薬物投与」は、特定の病状に対して薬を処方し続ける必要がありました。例えば高血圧治療では、一度薬を開始すると長期間にわたって服用を続けなければなりません。
しかし「改善ブースト」の考え方では、初期段階で薬物を用いて病状をコントロールしつつ、生活習慣の改善指導や、合わせて不足成分の補給を行います。そして、症状が軽いうちに、徐々に薬の依存度を下げることを目指すのです。これにより、患者は最終的に薬無しでの健康維持が可能になる場合もあります。
この考え方では、痛みを和らげるための薬物投与だけでなく、急速な自己免疫力の増加のため、一時的に点滴治療や鍼治療を併用することを提案する場合もあります。
たとえば「原因の特定することが難しい腰の痛み」があったとしてます。
鍼治療を施すことで一時的に痛みを取り除くことで、患者は痛みがない状態で適切に体を動かし、自己治癒力を高めることに専念できます。この状態を継続することができれば、体の自然なバランスと機能を改善し、痛みの再発を防ぐことが可能になります。ここまでは既存の医療でも目指してきたことですが、実際には痛みのない状態を、体質が改善するまで長期的に維持できないケースが多いものです。
そこで、予防内科では、痛みを除去することと合わせて、年齢と共に不足する栄養素を補うためにサプリメントや点滴の摂取を推奨していきます。例えば、前述の抗老化でお伝えしたとおり、ミトコンドリアの機能を支えるサプリを摂取することは有効な手段となります。これは、身体の基本的な機能を高め、病気になりにくい体質を作るためです。
痛みを取り除くと同時に、身体の基礎的な免疫力の向上を、自己免疫力以外の、外の力を使って加速させることで、一気に回復させることを目指すのです。
ですが、最も重要なのは「改善ブースト」は、あくまで「薬に頼るだけの治療から脱却」をめざしており、患者一人ひとりの生活全体の質を向上させることを目指している、という点です。
このアプローチにより、長期的に健康を維持し、病気を予防することにもつながります。
予防内科において整えたい人間に本来備わっている機能10個
港北ハートクリニックが提唱する予防内科では、「病気を治す」のではなく、「病気にならない身体をつくる」ことを目的としています。そのために特に重視しているのが、人間に本来備わっている10の基本機能――オートファジー、脳腸相関、深部体温の上昇、血管機能、自律神経、ホルモンバランス、抗酸化、デトックス、抗肥満、下半身筋力の活性化です。
これらの機能はすべて、私たちの生命活動を支える根幹であり、健康な毎日を送るための「土台」と言えるものです。現代の多くの不調や生活習慣病は、これらの機能が徐々に低下し、バランスが崩れた結果として現れます。
たとえば、ストレスによって自律神経が乱れると睡眠やホルモンバランスに影響し、さらに代謝や免疫機能の低下、肥満の進行へとつながるように、これらの機能は互いに密接に影響し合っています。つまり、どれか一つだけを強化するのではなく、全体をバランスよく整えることで、自然治癒力や再生力、恒常性(ホメオスタシス)といった人間本来の力が目覚めていきます。このアプローチによって、単に病気を防ぐだけでなく、「本来の元気さ」「軽やかさ」「若々しさ」が内側から立ち上がってくるのです。それが結果としてアンチエイジングにもつながり、年齢に抗うのではなく、年齢とともに輝き続ける体づくりが可能になります。
また、これら10の機能は、一般的な健康診断では見逃されがちな“未病”の兆候――「なんとなく疲れる」「やる気が出ない」「冷えやすい」といった、病気とは言えないけれど明らかに不調な状態――にも深く関係しています。私たちはこうした“まだ病気になっていないけれど放っておけない”サインにこそ目を向け、その人に合った方法で機能を回復・強化することで、「予防医療」を本質的に実践しています。
予防内科は、すでに病気になった人のためだけの医療ではありません。
まだ元気な人が、もっと元気に、自分らしく生きるための医療でもあるのです。
それを実現する鍵が、この10の機能の回復にあると、私たちは考えています。
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オートファジー(細胞の再生機構)
細胞の中の古くなったタンパク質や不要な構造を分解・再利用するシステム。
これが正常に働くことで、老化やがん、生活習慣病のリスクが軽減されます。
断食や適度な運動で活性化が期待され、細胞レベルでの若返りに関与します。
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脳腸相関(こころと腸の密接な関係)
脳と腸は双方向につながっており、腸内環境が心の状態に影響を与えることが分かっています。腸内フローラのバランスを整えることは、メンタルの安定や自律神経の調整にも直結します。
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深部体温を上げる(内側からの体温上昇)
体の芯の温度(深部体温)が上がることで、代謝が促進され、免疫力も高まります。
冷えはあらゆる不調の元。筋肉運動・入浴・食事によって、自然な形で体温を整えます。
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血管機能(柔軟な血管が健康の鍵)
動脈硬化を防ぎ、全身に血液と酸素を届けるためには、血管の弾力性や内皮細胞の健康が重要です。運動・食生活・ストレスケアを通して、血管年齢を若返らせます。
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自律神経(交感・副交感のバランス)
交感神経(活動)と副交感神経(回復)のバランスが整うことで、睡眠・消化・ホルモン分泌が安定します。ストレスの多い現代社会では、この調整が重要な予防ポイントになります。
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ホルモンバランス(全身調和の指揮者)
性ホルモン・甲状腺ホルモン・ストレスホルモンなど、ホルモンは体内のあらゆるシステムを調整しています。年齢や生活習慣に応じたホルモンの適正化が、元気と若さを保つ鍵となります。
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抗酸化(酸化しない体づくり)
酸化とは「体のサビ」。ストレスや紫外線、食品添加物などが引き起こす細胞の劣化です。
抗酸化力を高めるには、ビタミン・ポリフェノール・抗酸化酵素の活性化が重要です。
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デトックス(溜めない体)
体に溜まった有害物質(重金属、化学物質、老廃物)を適切に排出する力。肝臓・腸・腎臓・皮膚・汗腺の働きを整えることで、内側からスッキリした体を目指します。
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抗肥満(脂肪を溜めにくい体質)
ただ体重を減らすのではなく、「燃えやすく太りにくい」体質を作ることが予防の基本です。インスリン抵抗性の改善、筋肉量の維持、脂肪の質の見直しが重要です。
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下半身筋力アップ(健康寿命を支える足腰)
人間の筋肉の7割以上は下半身に集中しており、歩く・立つ・代謝するなど生命活動の土台。スクワットや歩行習慣など、下半身を意識した筋力アップが体力と長寿を支えます。
自律神経外来
自律神経とは、私たちの意思とは関係なく、24時間休まず体内のバランスを整えてくれている神経のシステムです。心臓を動かす、胃腸を働かせる、体温を調整する、呼吸を整える――こうした無意識の生命活動は、すべて自律神経が担っています。
自律神経は大きく分けて、以下の2つの神経から成り立っています:
交感神経(こうかんしんけい):活動・緊張・興奮の神経。昼間やストレス時に活性化。
副交感神経(ふくこうかんしんけい):休息・修復・リラックスの神経。夜間や休息時に優位。
※ 神経全体の区分けについては当院自律神経の不調 ページをご覧ください
この2つがシーソーのようにバランスを取り合うことで、私たちは元気に、かつ穏やかに暮らすことができます。
なぜ予防内科では「自律神経」を重視するのか?
予防内科において私たちが自律神経を重視するのは、それが全身のバランスを支える“見えない司令塔”だからです。自律神経は、心臓の拍動や呼吸、消化、体温調整、免疫、ホルモン分泌など、私たちの意思とは関係なく働いている生命維持の基本機能を調整しています。
つまり、自律神経が整っていれば、体も心も自然に調和がとれ、不調は未然に防がれます。逆に、自律神経が乱れると、内臓の働きは鈍くなり、血流も悪くなり、疲れやすさや冷え、気分の不安定さ、免疫力の低下、そして老化の加速さえ引き起こします。
とくに現代社会では、仕事や人間関係、デジタルデバイスによる刺激、夜型の生活習慣などが、交感神経ばかりを過剰に働かせ、副交感神経=リラックスや回復のモードがうまく働かなくなっています。その結果として、常に身体が緊張し、眠れない、休めない、疲れが抜けないという慢性的な負のループに陥る人が増えています。予防内科ではこの状態を「病気ではないけれど明らかに不調」と捉え、薬に頼る前の段階で、本来の自己回復力を引き出すことを目指します。
自律神経は、呼吸や姿勢、食事、入浴、香り、音、自然とのふれあいなど、生活習慣を通じて穏やかに整えることができる、極めて実践的な調整ポイントです。その意味で、自律神経は“治す”よりも“整える”医療を目指す予防内科にとって、中心的なテーマとなるのです。
この自律神経の調整において、私たちは特に「動悸」「睡眠」「更年期」に注目しています。
動悸は、心臓や血圧の病気ではないのに感じる胸のドキドキや不安感であり、多くは自律神経の過剰な緊張によって引き起こされます。睡眠の問題は、副交感神経がうまく働かないことで“夜になっても体が休まらない”状態となり、心身の疲労が蓄積します。更年期においては、ホルモンバランスの変化が自律神経を不安定にし、動悸や不眠、気分の波、冷えやのぼせといった多様な症状を引き起こします。
これらはどれも、検査では「異常なし」とされることが多いのですが、本人にとっては日常生活を大きく揺るがすつらい症状です。だからこそ、予防内科では自律神経を通じて、こうした不調の背景にある「バランスの崩れ」に光を当て、やさしく、確実に、整えていくことに力を入れているのです。それは、ただ病気を遠ざけるためではなく、その人が本来持っている穏やかさと元気さを取り戻すための医療といえるでしょう。
自律神経外来では、既存の医療体制における対症療法の限界に対抗し、個別の健康問題に対してより直接的かつ効果的な解決策を提供することを目的としています。このアプローチは、「動悸コース」、「睡眠改善コース」、「更年期対策コース」という三つの専門的なコースを設け、それぞれの症状に対して独自の治療方法を採用しています。
動悸コース
当院の自律神経外来が、数ある不定愁訴の中でも特に「動悸」に焦点を当てているのは、それが単なる循環器的症状ではなく、自律神経の“ズレ”や“偏り”を最も端的に、かつ身体的に感じさせるサインだからです。
多くの方が「動悸」と聞くと、心臓の異常や不整脈、あるいは不安発作などを想像します。しかし実際には、検査で器質的な異常は見つからず、しかし「自分の身体がおかしい」とはっきり感じる症状のひとつです。ここにこそ、私たちが注目する理由があります。動悸は、交感神経が過剰に優位になっているときや、副交感神経が十分に働かないときに起こりやすく、まさに**自律神経の乱れの“体感的サイン”**として非常に敏感な指標なのです。
循環器内科は、心臓や血管を見る専門領域であると同時に、実は全身の自律神経バランスを最前線で見つめてきた内科領域でもあります。心拍数・血圧・血流・血管の収縮と拡張——それらすべてが、自律神経の状態をそのまま反映する指標だからです。つまり、循環器内科こそが、自律神経の“動的な表現”を日常的に扱ってきた内科であり、私たちがその延長として自律神経内科を掲げるのは、ごく自然な流れでもあります。
そして、動悸という症状は、単に身体的な苦しさだけでなく、「病気ではないのに、明らかに普通じゃない」という不安感や孤独感を伴いやすいのも特徴です。検査で異常がないと言われても、当人にとっては明確な“異変”であり、その感覚に丁寧に寄り添うことこそが、予防内科の役割であると私たちは考えています。
だからこそ、当院は「動悸」に光を当てています。それは、単なる症状としてではなく、自律神経のゆらぎを感じ取り、本来のバランスを取り戻すための入り口として、極めて意味のある症状だからです。
そのため、動悸に悩む患者に対して、まず最初に行うのは通常の循環器内科としての検査とともに、自律神経のチェックです。自律神経の不均衡は動悸の一般的な原因であり、特に交感神経と副交感神経のバランスの崩れが考えられます。チェックマシンを使用してこのバランスを詳細に調査し、ストレスの影響などにより交感神経が優位になっている状態か、老化や疲労によりスイッチの切り替え機能の低下が見られる(自律神経機能の低下)状態かを特定します。
交感神経が優位になっている場合、リラクゼーション効果の高いYNSA(山元式新頭鍼療法)によって緩和して自律神経のバランスを整えることをお勧めしています。また、疲れや老化が原因である場合、酸素ボックスやエネルギー補充を中心とした錆び取りコースが推奨されることが多いです。
睡眠改善コース
当院の自律神経外来が、数ある自律神経症状の中でも特に「睡眠障害」に焦点を当てているのは、それが単なる生活上の悩みではなく、自律神経のバランスの乱れを最も正直に映し出す“日常の異変”であるからです。
眠りとは、本来“自然と訪れるもの”です。しかしその眠りが浅い、途中で目が覚める、寝つけない、朝がつらいという状態が続くとき、体はすでに「休むことができない」「副交感神経がうまく働いていない」というサインを出しています。睡眠は、交感神経(活動の神経)から副交感神経(回復の神経)へと切り替えるスイッチそのものであり、自律神経の本質的なリズムが乱れていると、睡眠も確実に乱れます。
ここで注目すべきは、循環器内科が実は「自律神経のリズム」を日常的に見てきた内科であるという点です。血圧、心拍数、血流、夜間の血圧変動――これらはすべて、自律神経の働きに左右されており、私たち循環器内科はそれを可視化する医療に最も近い立場にあります。つまり、私たちは眠りの質やリズムを「数字」として観察する手段を持っており、眠れないという主観的な訴えの背後にある身体のリズムの乱れを、医学的に捉えることができるのです。
さらに、睡眠障害は単独で終わることは少なく、高血圧や不整脈、糖代謝異常、うつや不安といった全身の問題へと波及していく入り口でもあります。その意味で、睡眠障害は「まだ病気ではないけれど、これから崩れていく予兆」であり、予防内科としての介入価値が非常に高いと私たちは考えています。
だからこそ当院では、睡眠の悩みを軽視しません。それは「眠れないこと」自体を治すためというよりも、眠れなくなっている背景にある、見えない乱れ=自律神経の不調にアプローチすることが、本来の目的なのです。そしてその視点は、心臓と血管、自律神経を日々扱う循環器内科の延長線上にあると、私たちは確信しています。
そこで、睡眠コースでは、まず睡眠の質をチェックし、特に睡眠時無呼吸症候群の有無を検査します。(詳細はこちら→睡眠の質の低下)無呼吸の問題がない場合は自律神経の検査に進み、その結果に基づいて、YNSA(山元式新頭鍼療法)や酸素ボックスを利用した治療を提案します。内科的な要因の場合は既存の医療で対応します。しかし、既存のアプローチで完治しない場合は、自律神経に原因を訪ねていくことで改善するケースがあります。なぜなら、睡眠の質と自律神経には密接な関係性があり、質が悪い場合は、睡眠時も交感神経が優位になっている場合が多く見られるためです。そのため、当院ではYNSAという頭部にアプローチする特殊な鍼灸を用いることで、まずは薬を使わずに急性的な改善をめざします。
は、特に自律神経の不調を整えるのに効果的であり、睡眠の質を根本から改善することができます。
更年期対策コース
当院の自律神経外来が、数ある症状の中でも「更年期障害」に重点を置いているのは、それが単なるホルモンの変化にとどまらず、自律神経の深いゆらぎとして現れる“身体と心の移行期”だからです。
更年期とは、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に低下することによって、身体の多くの機能が揺さぶられる時期です。ホルモンは体内のあらゆるシステムを調整していますが、その影響を最もダイレクトに受けるのが、自律神経です。つまり、更年期に起こるほてり、のぼせ、動悸、発汗、不眠、気分の波といった症状は、単なるホルモンの問題ではなく、ホルモンの変動によって自律神経のバランスが乱れることで引き起こされているのです。
ここで見落とされがちなのが、循環器内科の立ち位置です。一般には「心臓を診る内科」と認識されていますが、実は自律神経の働きを日常的に観察し、血圧や脈、血流、血管の動きといった“リズムの医学”を扱う、数少ない領域です。更年期において現れる動悸や血圧の不安定さ、発汗の異常などはまさに、自律神経の緊張と緩和の調和が崩れたときに現れる循環器的なサインでもあります。
だからこそ私たちは、更年期を「婦人科の問題」としてだけでなく、全身の神経系・循環系・代謝系のバランスが大きく移行する“節目”として受けとめ、医学的に丁寧に整える必要があると考えています。とくに、検査では異常が出ないのに本人のつらさだけが際立つケースにおいて、自律神経という見えない働きをきちんと捉え、ケアすることが、本当の意味での医療であると信じています。
当院が更年期障害に注目するのは、それが「病気」としてではなく、「人生の移行期に起こる、生理的だけれど苦しい変化」であり、自律神経の乱れという視点をもってはじめて、本質的なサポートができる領域だからです。そしてその視点は、血圧や脈拍という“身体のリズム”を見つめてきた、私たち循環器内科の知見から自然に導かれたものでもあるのです。
そこで、更年期に特有の症状を持つ患者には、自律神経の機能改善と補充療法の二つのアプローチを提案します。自律神経のチェックを通じて、過度のストレスや老化、疲労が原因であることが明らかになれば、酸素ボックスやメディカルヨガなどを通じてこれらの問題に対処します。
さらに、女性の場合はプラセンタ注射、漢方、ホルモン補充クリームを使用する他、女性の脱毛症(FAGA)に対しては、ミノキシジルとリジンを組み合わせた療法を提供します。男性の場合は、男性ホルモンの補充クリームや漢方サプリを提供する他、男性の脱毛症(AGA)治療には、ミノキシジルとフィナステリドの処方を行います。
これらの治療はすべて、患者の個別の症状や体質に応じてカスタマイズされ、一人ひとりの健康状態や生活習慣に合わせた指導が行われます。院長自らが考案した股関節体操などのエクササイズもYouTubeで公開し、患者が自宅で簡単にできる運動を提供しています。
自律神経外来では、現代医療の補完として、またそれを超える形で患者に新たな希望と実質的な健康改善をもたらすことを目的としています。これらの治療コースを通じて、対症療法に頼ることなく、根本的な原因にアプローチすることで、患者一人ひとりの生活の質を高めることができます。
免疫外来
免疫外来は、私たちの体が本来持っている自己治癒力を最大限に引き出すことを目的とした医療アプローチです。この手法は、既存の医療手段では解決が難しい種類の病状に対して新たな解決策を提案します。
免疫外来の核となるのは、体内のオートファジー機能と自己治癒力の活性化です。オートファジーは細胞が不要な部分や異常な部分を自己消化し、健康な状態を保つ自然なプロセスです。このプロセスを効果的に利用することで、細胞レベルでの健康を促進し、体全体の免疫力を高めることが可能になります。
免疫外来の取り組みは、従来の医療がアプローチしづらかった症状への光明となりうるものです。具体的には、科学的根拠に基づいた治療を提供しつつ、患者一人一人の体質や症状に合わせたパーソナライズドメディスンの展開を可能にします。このように、免疫外来を通して、私たちは既存の医療とは一線を画す新しい医療の形として、健康管理に新たな手法や概念をつくります。
1. 免疫性疾患への革新的アプローチ
免疫外来の重要な役割の一つとして、免疫性疾患への治療があります。免疫性疾患は、体の免疫システムが異常をきたし、自己の組織を攻撃してしまう状態です。従来の治療方法では、これらの症状の管理が主でしたが、免疫医療は根本からの改善を目指します。
特に注目されているのが、「フアイア」と呼ばれる漢方治療です。フアイアは、自然由来の成分を用いて免疫システムを調整し、過剰な免疫反応を抑える一方で、必要な免疫力を強化します。これにより、がんや感染症だけでなく、自己免疫疾患に対しても高い効果が期待できます。フアイアの利用は、自己免疫疾患やアトピー、喘息、乾癬など、多くの症状に対する新たな希望となり得ます。
フアイアがもつTPG-1という成分は、免疫医療において非常に重要な成分です。TPG-1は糖鎖の一種で、細胞間のコミュニケーションを促進し、免疫システムの安定化に寄与します。この成分が豊富なフアイアを用いることで、様々な免疫異常が引き起こす症状の緩和が見込めるのです。
2. 点滴療法とその多面的な効果
私たちが予防内科で提供する「点滴療法」は、単なる栄養補給ではありません。それは、体に本来備わっている自己治癒力や再生力を、根本から立ち上げるための医療的アプローチです。高濃度のビタミンやミネラル、アミノ酸、抗酸化物質などを静脈から直接体内に届けることで、消化吸収の個人差や負担を超えて、必要な成分を確実に、しかも即座に届けることができます。
これにより、慢性的な疲労や睡眠の質の低下、肌荒れ、自律神経の乱れ、免疫力の低下といった、日常的な“なんとなくの不調”に対して、細胞レベルからの立て直しが可能となります。
一般に点滴というと、脱水や感染症の際の応急処置というイメージが強いかもしれません。たしかに従来の保険医療における点滴は、「マイナスをゼロに戻す」対症療法が中心でした。しかし私たちが行う点滴療法は、「ゼロからプラスへ」向かうための積極的な介入です。特に、抗酸化作用に優れるビタミンCや、肝機能やデトックス力を高めるグルタチオンなどは、体の再生と回復の力を引き出す“内側からの治療”として、多くの方に効果を実感いただいています。
このようなアプローチを予防内科で行う理由は明確です。
検査では異常が見つからないけれど、疲れが抜けない、眠れない、気力が続かない――そうした“未病”の段階でこそ、今の体に何が不足していて、どこが滞っているのかを見極め、必要なサポートを最小限の負担で届けることが重要です。点滴療法は、まさにそのための手段であり、単なる栄養補助ではなく、体内のリズムを再起動し、細胞の活動そのものを目覚めさせるための“未来のための医療”だからです。
点滴療法は、ビタミンやミネラルを直接血流に注入する方法で、即効性と高い吸収率が特徴です。マイヤーズカクテルはその一例で、疲労回復や免疫強化に利用されますが、美容やアトピー治療にも効果があるとされています。この治療は、特定の成分が気管支や免疫システムに作用することで、喘息やアレルギーの症状を緩和することが可能です。
点滴療法の効果は使用される成分の組み合わせによって異なります。例えば、ビタミンCは免疫強化や抗酸化作用があり、他の成分と組み合わせることでその効果を最大限に引き出すことができます。漢方薬と同様に、点滴のレシピを変更することで治療の焦点を変え、患者の状態に最も適した治療を提供することが可能です。
3. 腸内環境と免疫システムの相互作用
腸内環境の改善は免疫外来におけるもう一つの重要な柱です。
腸内環境の改善は、単に便通を整えるという話にとどまりません。私たちが予防内科において腸に注目するのは、腸こそが「免疫の70%以上が集中する最大の免疫器官」だからです。体に入ってくるものの多くは、口から入り、最初に腸で“選別”されます。つまり腸は、食べ物だけでなくウイルス・細菌・有害物質に対しても「これは吸収していいか」「排除すべきか」を判断する、**いわば免疫の“現場”**なのです。
腸の環境が悪化すると、免疫細胞の誤作動が起きやすくなり、アレルギー反応、自己免疫疾患、慢性炎症、感染症への抵抗力低下、そしてメンタルの不調まで引き起こされます。近年の研究では、腸内細菌が脳の神経伝達物質(セロトニンやGABAなど)にも影響することがわかっており、「腸は第二の脳」とまで言われるようになりました。つまり、腸内環境を整えることは、体の防衛力を高め、心の安定を育み、全身のバランスを保つために欠かせない根本的アプローチなのです。
しかし、こうした腸の重要性に対して、従来の医療はあまりにも「対症療法」に偏ってきました。便秘には下剤、下痢には整腸剤、といった対処では、腸内環境そのものを“育てる”という視点が欠けているのです。また、ヨーグルトや乳酸菌飲料が腸にいいとされていますが、それで整う人はごく一部です。腸内細菌の構成は人によって全く異なり、特定の菌を補っただけで劇的に改善するほど単純ではありません。土台となる腸の粘膜の状態、腸管免疫の反応性、食生活、ストレス、睡眠などを総合的に見直す必要があるのです。
私たちが行う腸内環境の改善は、「菌を足す」のではなく、「菌が育ちやすい環境を整え、炎症を鎮め、腸そのものの働きを取り戻す」ことに主眼を置いています。具体的には、ファスティング(腸のリセット)、食物繊維やプレバイオティクスの設計、必要に応じたサプリメント、ストレスケアや睡眠調整、さらには腸と脳の連携にまで目を向けます。
こうして整った腸は、免疫の暴走を抑え、代謝やホルモンバランスを安定させ、内臓全体の働きを底上げする土台となります。実際、「何をやっても治らなかった肌荒れが引いた」「アレルギーが軽くなった」「風邪をひかなくなった」「眠れるようになった」などの変化が、腸を整えただけで起こることが少なくありません。
それは、腸が“ひとつの臓器”ではなく、全身のネットワークの中心として働いているから。だからこそ、腸内環境の改善は予防医療における最重要テーマであり、見落としてはならない根本アプローチなのです。
プロバイオティクスとは、体に有益な働きをする生きた微生物(主に乳酸菌やビフィズス菌など)を摂取することで、腸内の善玉菌を増やし、腸内フローラ(腸内細菌のバランス)を整えることを目的とした健康アプローチです。これらの善玉菌が腸内で増えることにより、消化吸収の改善や腸管免疫の活性化、炎症の抑制など、全身の健康を支える土台が築かれます。
とくに注目されているのが、免疫システムへの影響です。腸は体内最大の免疫器官であり、腸内細菌は免疫細胞の働きを調整する“教育役”でもあります。さらに、腸内細菌は細胞間での化学伝達物質(たとえばセロトニン、ドーパミン、GABAなど)の合成にも関わっており、腸から脳へと情報を伝える「腸脳相関」の鍵を握っているのです。
そのため、健康な腸内フローラは、単に便通や体調を整えるだけでなく、情緒の安定や不安の軽減、うつ症状の改善、そして慢性疾患の予防や緩和にも直接的に関わります。プロバイオティクスの摂取は、こうした“全身のバランス”に働きかけるシンプルかつ強力な手段の一つとして、予防医療の現場でも広く活用されています。
これらのアプローチは、単に症状を管理するのではなく、体全体の機能を向上させ、病気への抵抗力を自然に高めることを目的としています。免疫外来は、これら全ての要素を組み合わせることで、患者一人一人にカスタマイズされた治療を提供し、真の健康を追求するものです。
抗老化外来
エナジーアップ処方で、元気な人をより元気に
抗老化外来では、「老化」を単なる自然現象ではなく、細胞レベルで起きる“エネルギーの減少”という症状の一つと捉え、医学的に介入する新しい治療を行っています。老化にともなって現れる、疲れやすさ、思考力の低下、筋力の衰え、肌のハリの喪失などの変化は、すべて細胞のエネルギーが不足することで起こります。
そのエネルギーの正体こそが、「ATP(アデノシン三リン酸)」です。
ATPは、細胞が修復したり、動いたり、守ったり、代謝を行ったりするための“生体の通貨”ともいえる存在です。エンジンのバッテリーのようなものであり、その電池の電気を作って、筋肉、脳、各臓器が動くため、これがなくなって仕舞えば、極端には、人は死んでしまうことになります。
このATPをつくる“発電所”のような働きをしているのが「ミトコンドリア」です。しかし加齢によりミトコンドリアの数や働きが低下すると、ATPの産生量が減り、体全体の機能も落ち込んでいきます。そこで私たちは、このATPを再びしっかりと生み出せるようにするため、当院の抗老化外来では「エネジーアップ処方」を行っています。
▷ ATPを生み出すために必要な“材料”と“仕組み”
ATPの産生には、3つの代謝プロセスが関わります。
- 解糖系(細胞質で少量のATPを産生)
- クエン酸回路(TCA回路)(ミトコンドリア内でエネルギー中間体を作成)
- 電子伝達系(最終的に34個以上のATPを一気に生み出す)
この回路をスムーズに動かすためには、さまざまな「エネルギー源」と「補酵素」が必要です。
【主要なエネルギー源】
- 5-ALA(5-アミノレブリン酸)
これは、赤血球の「ヘモグロビン」やミトコンドリア内の「ヘム」という分子の材料になります。ヘムは酸素を運び、代謝反応を回すために不可欠です。つまり、酸素とエネルギーをつなぐカギとなる存在です。
- NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)
これは、体内でNAD⁺(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)という補酵素に変化し、クエン酸回路を回す“着火剤”になります。NAD⁺は、老化と強く関わる「サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)」の活性化にも関与しており、老化抑制のスイッチを入れる上でも極めて重要です。
【補酵素・サポート成分】
- αリポ酸
糖の代謝を助け、ミトコンドリアの回路全体を滑らかに回すための補酵素です。さらに、抗酸化物質としても優秀で、失活したビタミンCやEの“抗酸化力”を再活性化させるという、いわば“抗酸化の再充電装置”としても働きます。
- グルタチオン
3つのアミノ酸から成るトリペプチドで、肝臓を中心に体全体の解毒と抗酸化を担う“守りの要”です。ミトコンドリアを酸化ストレスから守り、細胞が長く健康で働き続けられるように支えます。
- ビタミンB1(例:にんにく注射)
クエン酸回路でのエネルギー産生に不可欠な補酵素のひとつであり、疲労感を改善する即効性のある成分としても知られています。
▷ なぜすべてが必要か?「樽板理論」の視点
これらの成分は、どれか一つだけを補えば良いというものではありません。どれか一つでも不足していると、ミトコンドリアのエネルギー回路全体が滞ってしまい、十分なATPが生まれません。このことを、当院では「樽板理論」として、説明しています。
桶板理論とは、いくつもの板でできた桶(おけ)の中で、一番短い板が桶の水の限界になるように、どの栄養素や補酵素が足りなくても、体全体のパフォーマンスはその「一番の欠乏」によって制限されることに由来します。現代の医学では、「自分にどの栄養素が不足しているか」を完全に特定する方法がないため、私たちは 全体を底上げする方針=“一通りを適切に補う”という戦略を取っています。これが、エナジーアップ処方の方針であり、抗老化外来の核心です。
エナジーアップ処方という未来型の応用
このエネルギーを補給する、アプローチは、単なる“老化予防”にとどまらず、「今、元気な人がさらに元気に」なれる医学としても機能します。特に、30代〜50代の、まだ病気とはいえないけれど、「最近疲れやすい」「昔より集中力が落ちた」と感じている方にとって、これは20代のようなエネルギーを再び手に入れるための“エナジーアップ”としての価値を持ちます。
そもそも、このアプローチは、加齢による衰えの「遅延」ではなく、パフォーマンスの「再設計」を目指すものです。細胞のエネルギー産生を高めることで、私たちは「歳を重ねてもなお、活動的で創造的な人生を送る」ための医療を現実のものとしようとしているのです。
必要なのは、「ATPをつくる力」への直接介入
老化は、細胞の“燃料切れ”です。私たちはその根本に介入し、ATPを生み出す材料・補酵素・環境のすべてを包括的に整えることで、「老化しにくく、疲れにくく、よく動き、よく考えられる身体」をつくることができると確信しています。
この後、当院が提供する具体的なソリューション(点滴・サプリメント・ファスティング・生活改善プランなど)は、すべてこのエネルギー医学の思想に基づいて設計されています。
それは、単に見た目を若返らせるのではなく、細胞の内側から、人生の可能性そのものを引き上げる医療なのです。
抗老化外来のソリューション 「8つのソリューション」
細胞レベルから若さを取り戻す新しい医療のかたち
老化とは、単に年を重ねることではなく、私たちの身体を構成する「細胞」がエネルギーを生み出す力を失い、その働きが鈍くなっていくこと。港北ハートクリニックの抗老化外来では、そのメカニズムに正面から向き合い、細胞レベルの若返りを目指すための9つのソリューションを設計しています。以下、それぞれの役割と意義をご紹介します。
① NMN補充──細胞の若返りスイッチをONにする(サプリメント処方)
老化の鍵を握るのは、NAD+という物質の減少。NMN(ニコチンアミド・モノヌクレオチド)はその前駆体であり、体内に取り入れることでNAD+が増え、細胞内のミトコンドリアを再び活性化させます。これは、いわば細胞のエネルギー工場を再稼働させるスイッチのようなものです。サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)の活性にも不可欠とされ、根本的な老化対策における中核的存在です。
② 5-ALA補充──酸素とエネルギーの架け橋を支える(サプリメント処方)
5-ALAはヘムという物質の材料であり、ヘムは赤血球の構成要素であるヘモグロビンの中心成分です。酸素の運搬能力を底上げすることで、全身の細胞に新鮮な酸素を届け、ATP(細胞のエネルギー源)生成の基盤を整えます。酸素を効率よく活用するために不可欠な素材です。
③ αリポ酸──酸化と闘う細胞の味方(点滴 or サプリメント処方)
ATPを生み出すTCA回路の補酵素でありながら、同時に強力な抗酸化作用をもつαリポ酸は、細胞を老化させる「悪い活性酸素」から身体を守ります。さらに、使い古されたビタミンCやEなどの抗酸化物質の力を“再起動”させる役割も担い、まさに抗酸化ネットワークの要です。
④ ビタミンB1(ニンニク注射)──瞬発的エネルギーチャージ
疲労時に注射として使われることが多いビタミンB1は、TCA回路の中で重要な補酵素のひとつ。即効性があるため、「今すぐ活力がほしい」という方にも適したエネルギー回復策です。
⑤ グルタチオン点滴──解毒と若返りの二刀流
グルタチオンは体内の解毒機能を支える代表的な成分。肝臓の働きを助け、老廃物や有害物質の排出を促します。さらに、強力な抗酸化作用でミトコンドリアを守り、細胞の活性を支えます。デトックスと再生を同時に狙える希少なアプローチです。
⑥ 酸素ボックス+水素吸入──“吸う”抗老化ケア
自然呼吸では補いきれない酸素を、圧縮環境下で血中に取り込む「酸素ボックス」。これによりATPの生成が飛躍的に向上します。同時に生まれる活性酸素を抑えるため、水素吸入による中和ケアもセットで実施。酸素と水素のバランスが、ミトコンドリアの働きを最適化します。
⑦ 栄養補充点滴──全身の細胞に栄養という武器を届ける
点滴には、他にプラセンタ、高濃度ビタミンCがあり、症状に合わせて、各点滴をオーダーメイド、またはコンビネーションで処方します。αリポ酸やグルタチオンをはじめ、ミネラルやビタミンなど、細胞の再生に必要な成分をダイレクトに補給します。飲み薬では届きにくい栄養を静脈から効率的に投与することで、エネルギー代謝全体を底上げします。
⑧ 錆びつき対処コース──筋肉と血管に“しなやかさ”を取り戻す
上記の7までのソリューションをすべて、患者の状態、要望に合わせて提供していくのが錆びつき対処コースです。年齢とともに硬くなる筋肉・関節・血管。それらを柔軟に保ち、動きやすい体を維持するための対処法が、この「錆びつき対処」ソリューションです。抗炎症・抗酸化の複合処方で、痛みの緩和と可動域の向上を目指します。
おわりに
これら8つのソリューションは、単なる“アンチエイジング”ではありません。身体の奥深く、細胞ひとつひとつに働きかけることで、「歳を重ねながら、若くなる」という、これまでになかった健康のかたちを実現します。抗老化外来は、今のあなたに必要なエネルギーの形を共に見つけ、その未来を支えていきます。
ー 予防内科は、幸福を高める医療 ー
予防内科は、単に病気の治療を超えて、病気の発生を予防し、全体的な健康を長期にわたって維持することを目的とした新しい医療のアプローチです。この分野のビジョンは、未来の医療がどのように患者中心で、予防的で、かつ持続可能であるべきかを示すものです。予防内科の根底には、患者一人ひとりが持つ自己治癒力を最大限に引き出し、病気のリスクを管理しながら全体的な幸福を高めるという理念があります。
この医療アプローチの最大のメリットは、病気の発症前にリスク要因を特定し、介入することで、高額な治療費や病気による身体的および精神的な負担を減少させることができる点にあります。例えば、生活習慣病が長期にわたる健康問題を引き起こす前に、食事の改善、適切な運動、ストレス管理を通じて予防措置を講じることが可能です。このようにして、予防内科は、慢性的な病状が深刻化することを防ぎ、患者の生活の質を向上させます。
さらに、予防内科は、伝統医療と現代医療の融合により、患者に合わせた個別化された治療プランを提供することができます。これにより、各患者の独自の健康ニーズと状況に応じて、最適な健康戦略を展開することが可能となります。漢方薬や自然療法といった代替治療を組み合わせることで、副作用のリスクを抑えつつ、症状の管理と改善を図ることができます。
未来の医療としての予防内科は、医療費の増大という社会的課題にも対応します。病気の予防と早期発見により、高額な医療介入が必要となる状況を減少させ、医療システムにかかる負担を軽減することが期待されます。これは、持続可能な医療システムを構築する上で不可欠な要素であり、全体の医療コストの削減にも寄与します。
結局のところ、予防内科は、患者が自らの健康を管理し、病気になるリスクを最小限に抑えるための知識とツールを提供することで、より健康で充実した生活を送ることを可能にします。この医療アプローチが広く採用されることで、未来の医療はより予防的で、患者中心のものへと進化し、すべての人々の生活の質の向上に寄与することでしょう。