体重増加
体重増加について
当院の予防内科では、肥満をあえて「体重増加」と呼んでいます。
なぜなら、そもそも肥満という結果に至る前の状態を未病という「病気」として定義し、早期にアプローチのための改善を提案していきたいためです。
現在、体重の増加、肥満は一般的には「病気」としてあまり捉えられていません。しかし、現実には「肥満は万病の元」と言っても良いほどに、さまざまな症状の原因となります。そこで、予防内科では、「体重の増加」そのものを、危険なサインだと考えていきます。
体重が増加するとどうなる?
体重増加の悪影響で主なものは、膝痛、腰痛、動悸・息切れ、いびきなどがあります。悪化すると睡眠時無呼吸症候群をはじめ、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病になります。
これら生活習慣病は、血管を傷つけ、もろくするため、動脈硬化を引き起こします。その結果、心筋梗塞や脳卒中などの重大な病気へと進む原因となります。他にも大腸がんや前立腺がん、乳がん、子宮がんなど、多くのがんのリスクを高めることも指摘されています。
更に、人は加齢とともに筋肉量や骨量が減るなどして身体機能が低下していきますが、そこに体重の増加が加わることで、骨や関節への負担が大きくなるため、腰痛や膝痛などの症状を引き起こしやすくなります。その結果、転んだりして急に大きな負担を受けると、骨折を起こすことも少なくありません。
よって、体重が増加することは上記の様に、身体機能への負荷と低下、血管の中が傷つく、という点を見ると「体内において老化することと同じことが起きている」ともいえます。ですので、過剰に体重が増加している方は、たとえ見た目は若齢のために肌にハリがあったとしても、実は体の中は老化している、ということができます。
体重増加の主な理由
体重が増加する理由としてわかりやすいものとしては、過食と運動不足が代表的なものとして挙げられます。その他、医学的には、睡眠不足やストレスも、体重増加の原因と考えます。
例えば、自律神経機能のバランスが崩れるなどして、正常に老廃物が除去されなかったり、活性酸素酸が蓄積することによる身体機能の低下によって、脂肪細胞が増加、蓄積されていきます。この時、人の体の細胞には、主に二つの現象が起きています。
● 脂肪細胞が増える
● 一個の脂肪細胞が膨らむ
体重が増加する、というのは、この二つの工程が、双方に起こっていくことを意味しています。細胞の中で、脂肪が増え、大きくなりながら、分裂していくのです。
この時、脂肪細胞には白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の2種類があり、脂肪を作って体重の増加につながるのは、白色の脂肪のみとなっています。白色脂肪はエネルギーを貯める役割を持っているため、消費されないと、そのまま脂肪へと転化するためです。もう一方の褐色脂肪細胞は、血液中の遊離脂肪酸を取り込んで、熱(エネルギー)を作る役割を持っています。
太る人はカロリーなどの摂り過ぎにより、白色脂肪細胞が膨らんで、増えてしまうのです。では、褐色脂肪細胞を増やせば、エネルギーを作る、つまり消費してくれるので、ダイエットにいいのでは? と思う方もいらっしゃるかもしれません。夢のダイエット薬として実際にその研究をした研究者はいても、残念ながら実現はしませんでした。この褐色脂肪細胞は40歳以降、減っていく傾向にあります。老化とともに減少するため、いわゆる「中年太り」が起こる原因と考えられます。
現在はさらに踏み込んだ観点で、体重の増加に関してのメカニズムが明らかにされています。そのひとつが、グレリンとレプチン、という脂肪細胞から分泌されるホルモンについての研究です。
レプチンは満腹感を感じるもので、基本的に食事をした後に分泌されます。脳の視床下部にある満腹中枢が刺激を受けることで満腹感を感じる、とされています。食事を摂る回数が多い、と言うことは、それだけ脂肪細胞が多くなるめ、多く分泌されていることになります。
グレリンは胃から分泌されるホルモンで、空腹時など、エネルギーが不足した場合に分泌されることで、脳の視床下部にある食欲中枢が刺激されることにより、食欲が刺激されます。
正常な状態では、エネルギーが不足するなどしたタイミングでグレリンが分泌され、栄養を摂取したら、十分にレプチンが発生する、というのが理想です。しかし、例えば、睡眠不足の状態は、グレリンが増加し、レプチンが低下する、という逆転の状況が起きることが報告されています。
簡単にいうと、ホルモンによって「食べ過ぎてしまう」とうい状態が起こりやすくなっているのです。
主な対処
これら要因に対して有効なのは、シンプルには、生活習慣を整えることです。特に、睡眠時間が短い人は前述のホルモンバランスの異常などから1日平均で摂取するカロリーが正常な人よりも多くなる、という調査も発表されている通り、睡眠不足には注意した方が良いでしょう。
睡眠不足含めて生活習慣の乱れは、全て自律神経の働きのバランスを崩すことにつながっています。自律神経のバランスを崩すことは、グレリンとレプチンのバランスを崩し、過食の原因となります。また、自律神経は基礎代謝の機能にも密接なつながりがあるため、エネルギーの消化効率にも大きな影響を及ぼします。
生活習慣の中では運動も大切です。運動といっても厳しい筋力トレーニングなどをする必要はありません。ストレスを解消する程度のイメージで、軽い運動を1日の中に習慣として取り入れていくのは、カロリーの消費という以外に、ストレスの軽減の意味でも有効です。
とはいえ、生活習慣の改善は時間がかかることでもあり、また、過食につながる「食欲」の習慣は自覚が難しく、抑えにくい症状でもあります。
そこで、当院では体重の増加も一つの「病気」として捉える予防内科を開設し、診療にあたっています。そこでは自律神経の現状をチェックをする機器を備えている他、バランスが乱れている場合は、その調整に優れる頭鍼(YNSA)を受けられる環境も併設し、通常の医療ではなかなかカバーすることの難しい症状への改善策を提案しています。
また、日常で簡単に取り入れることのできる運動などを紹介した指導箋をつかった診断の他、院内では高齢の方でも基礎対処の向上が見込める「メディカルヨガ」の提供も開始しています。その他、生活習慣指導や、適時サプリメントなど、様々なアプローチで根本的な医療を展開しております。
今後はファスティングや腸マッサージなども導入を検討していますので、本ページの内容に心当たりのある方は、是非とも一度、当院の予防内科をご受診ください。